オレンジマーマレード Orange marmalade

こんにちは、玉井です。


イギリスでジャム、と言ったら何を思い浮かべますか?

ラズベリージャム、ストロベリージャムなどのベリー系のものが多いと思いますが、それらと共に一般的だと思われているものの一つに、マーマレードがあります。


イギリスではワールド・マーマレード・アワード(The world marmalade awards)というコンペティションが毎年あるくらい、マーマレードは人気があり、毎年何百ものオリジナルマーマレードがイギリス全土からだけでなく、世界各地から参加し、評価されています。

日本から参加される方も多く、賞を取っておられる方も大勢います。


ただ意外なことに、一般的にはこの大会の認知度はものすごく低く、私がいたトットネスで尋ねたイギリス人は全員知りませんでした。マーマレードが人気なのは確かだと思うのですが、ワールド・アワード…とまでなるとマニアの領域なのでしょうか。

余談ですが、よくこういうマニアック(または地域的)な知識を披露すると、各国のクラスメイトや先生に、「日本人は一部の情報を全てだと思い込む」と冷やかされました。

ちなみにですが、日本ではクリスマスの食べ物として定番化しているシュトーレン。私が知り合ったドイツ人に話すと、なんでそんなもの知ってるの…と不思議に思われました。あれってすごく地域的なものなんですね。



マーマレードと言えば、玉井家では父が夏に作るものでした。というのも、夏の終わりになると親戚の山の取り残しの夏ミカンを取りに行った父が、なんとなく作るものだからです。最近では母が、友人のミカン農家さんから、商品でないいろんな種類の”オレンジ”をもらってきて、まるで実験のようにマーマレードを生産しています。

オレンジごとに全く異なるキャラクターのマーマレードができるので、ワールド・マーマレード・アワードが盛り上がるわけです。



それでは、マーマレードの歴史について少しお話してみようと思います。

マーマレードの名前の由来は、ポルトガル語のmarmeleからきており、marmeleはギリシャ語のmelimēlonがローマ人に伝わり、変化して言った言葉です。

ポルトガル語のmarmeloは日本ではそのままマルメロとして、果物のカリンの一種に使われているので混乱をきたすかもしれませんが、イギリスではマルメロはquincesと呼ばれています。ポルトガルから来たmarmeloは、quincesをハチミツで煮詰めた(プリザーブした)ものでした。


歴史家によると、16世紀ごろまではマーマレードという言葉は果物を砂糖やハチミツで煮た保存食の総称でした。”ペースト状のquinces”という形でギリシャから伝わってきたマーマレードは、ギリシャからイギリスに至るまでに様々に名前を変え、使う果物も今ではバラエティーに富んでいますが、いつごろからオレンジのプリザーブをマーマレードと呼ぶようになったかはわかっていません。

歴史的には、1524年にヘンリー8世がマーマレードの箱、1箱をエクセターのMr Hullから受け取った、という記述が残っています。しかし、このマーマレードはおそらくポルトガル産で、中身もquincesのペーストであっただろうと言われています。


1677年、Eliza Cholmondeley著の英語のレシピブックでは、最も初期のレシピの内の一つである、オレンジを使ったマーマレードのレシピを見ることができます。このレシピは”Marmelet of Oranges”というタイトルで、濃くて暗褐色のしっかりとしたペースト状のものでした。

オレンジマーマレードとして最も早くに出版されたレシピは、1714年のMary Kettilby著の”A collection of above Three Hundred Recupes”に載っており、このマーマレードは現代のマーマレードに近いものだったと言われています。


ここではさすがにマルメロの由来は~などということまでは言及しませんが、マーマレードの歴史を調べる作業は簡単にはいかない、国際的、文化的、自然環境的な膨大なデータを伴うものでした。

これは実は素晴らしいことで、私はイギリスの甘いものの歴史を、できればその発祥から現在の形に至るまで、できる限り調べたいと思っています。しかし、これがなかなか難しい作業で、大抵どのお菓子を調べても、結局は「歴史的にはわかっていないのですが~」に納まってしまいます。

というのも、イギリス含めヨーロッパの伝統的なお菓子はとてもシンプルで、大体が小麦粉、砂糖、バター、卵でできています。同時多発的に発明されたお菓子も多く、よほど言われがない限り、なかなかクリアに歴史を調べることは難しいのです。

その点、マーマレードは出発点であるマルメロの歴史まで調べることができ、なかなか終わらない楽しい作業でした。



さて、1月中旬、ウェンディーと私は3日かけて約20瓶のマーマレードを作りました。

初日にはオレンジとレモンの下処理、2日目にはウェンディーがもっとたくさん作ろうと決めたため、追加の下処理をし、最終日に一日かけてそれらを煮詰めて瓶詰にしました。


ウェンディーは毎年大量のマーマレードを作ります。年によってその味は異なるのですが、一度彼女の家族がおいしい!という評価をつけると、ジャムの大瓶1瓶が2、3日でなくなってしまうそうです!



これからご紹介するレシピは、ウェンディーのお母さんのものです。相変わらずあいまいなところの多いレシピですが、参考になればと思います。

ただ、ぜひ一度見てもらいたいウェブサイトがあるので、ここで紹介させてもらいます。

”They draw & cook”というアーティストのサイトなのですが、レシピをイラストで表現したり、イラストの中にレシピを組み込んだりした、料理好きのアーティストのための投稿サイトです。

ウェンディーもここにいくつか投稿しており、このレシピはサイト内で見ることができます。ぜひサイトに行って”Woodle Doo”で検索してみてください。可愛い彼女のイラスト付きのレシピを見ることができます。


マーマレード Grandma`s Orange Marmalade

オレンジ…大9個

果汁たっぷりのレモン…3個

砂糖…9 lb(1 lbが450gなので、約4㎏)

①オレンジとレモンは4等分にカットし、果汁と皮、残った果肉、それ以外(種や筋、房など)に分けておく。

②皮と果肉は薄くカットし、果汁と一緒にひたひたの水につける。種や筋などはざるに入れ、これらも同じ水に浸るようにしておく。1晩置く。

③種などは外に出ないようにメッシュの袋などに移す。これを鍋に戻し、火にかけてぐらぐらになるまで煮る。砂糖を加えてさらに煮る。

④あらかじめ小皿を冷蔵庫で冷やしておき、煮詰め具合をチェックする。煮詰めた液を冷やした小皿に垂らし、再度冷やした後で指で線を引いたときに、膜ができていたら完成。滅菌した瓶に詰める。


今は砂糖少な目だったり、代用品を使ったりと健康に配慮したレシピがたくさん出回っていますが、さすが戦後のレシピ。保存性は抜群です。砂糖はまあお好みで、ということで、ぜひ試してみてください。

British bake on

イギリス留学中に出会った、イギリスの伝統的な焼き菓子、ローカルビレッジの家庭のお菓子をメインに紹介するブログです。

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